「がん」って何?

私たちの身体を作り、その働きを支えているのは60兆個もの細胞です。これらの細胞は一定のサイクルで新旧入れ替わりながら、生命の維持に必要な役割を果たしています。がん細胞は、こうした正常な細胞の遺伝子に傷がつくことがきっかけとなって発生します。その後、生活習慣や環境汚染などさまざまな要因が作用しながら、長い期間をかけて性質(たち)の悪いがん細胞へと変わっていくのです。

細胞ががん化すると、周囲の状況を無視して自分勝手な行動をとるようになります。正常な細胞は身体に合わせて分裂が制御されていますが、がん細胞はこの制御を無視してどんどん増え続け、周りの正常な組織に侵入していきます(浸潤)。さらに、血管やリンパ管を通って体のあちこちに移動し、そこで増殖(転移)をはじめることもあります。こうした無法者ぶりこそが、がんが恐れられる本当の理由といえるでしょう。

RCC(腎細胞がん)はどんな病気?

RCC(腎細胞がん)の写真

腎臓は、みぞおちの高さの背中側に背骨をはさんで左右一対ある、ソラマメのようなかたちをした臓器です。血液中の老廃物を尿として体外に出したり、体の水分の調節を行っています。ほかに、血圧のコントロールに関するホルモンや造血に関するホルモンを産生するなどの働きをしています。

成人の腎臓にできる悪性腫瘍のうち、最も多いものがRCCです。日本人のRCC患者は人口10万人に6人ほどで、50歳から80歳代に多く発生しています。比較的ゆっくり大きくなるタイプのがんですが、静脈の中に腫瘍が広がる(腫瘍血栓)傾向が強く、肺、骨、脳、肝臓、リンパ節など他の臓器への転移を生じやすいがんでもあります。

なお、RCCは、喫煙者や肥満、高血圧の人に多く発症するということがわかっています。発生しやすい家系があることも知られており、遺伝子の解析技術が進んで、そのような家系の人は発病前から将来RCCにかかることが予測できるまでになっています。予防法に関するさまざまな研究も行われており、治療法としては、手術、免疫療法、分子標的薬による治療が用いられています。

RCC(腎細胞がん)はどうやって見つかるの?

RCCは大きくなると、尿に血が混じったり(血尿)、脇腹の腫れや痛みなどの局所の症状や、原因のはっきりしない発熱、体重減少などの全身症状が現われてきます。しかし、腫れや痛みはRCCが相当大きくならないと出現しませんし、血尿も多くの場合、RCCが大きくならないと出現しません。

そのため以前はかなり進行してから発見されるケースが大半を占めていましたが、最近は超音波検査やCT検査などが普及したことにより、健康診断や他の病気で検査を受けた際に偶然発見される、症状のない小さなRCCの発見されるケースが増えてきています。

その一方で、肺や骨に転移した腫瘍がまず発見され、いろいろ調べているうちに腎臓に原発のがんが見つかって、「RCCの肺、あるいは骨への転移」と診断されるケースもあり、そのような患者さんの数は減っていません。

RCC(腎細胞がん)の治療法

1. 手術

転移のないRCCの場合、治療の第一選択は手術で、治癒も期待できます。なお、腎臓は左右に2つあるので、治療のために一方の腎臓を摘出しても、手術後に残る反対側の腎臓が正常であれば腎不全になることはなく、生活の制限を受けることはまれです。

最近では、小さなRCCや多発性のRCC、反対側の腎臓の働きが悪い場合には、悪い方の腎臓の正常部分を一部残す手術(温存)が標準治療となっています。

転移のある場合でも、全身状態が良いなど一定の条件を満たせば、原発の腎臓の摘出や、転移巣の摘出手術が行われ、生存期間の延⻑を期待できることがあります。また、骨、脳転移などに対しても手術や放射線治療などで、QOL(Quality Of Life:生活の質)を改善することが可能です。

2. 免疫療法

現在、RCCに対する治療は原則的に腫瘍の摘除が行われていますが、腫瘍の転移部位の摘除が困難な場合や手術後に再発した場合には、免疫療法が行われることがあります。これはRCCに対しては、抗がん剤や放射線療法があまり有効ではないという理由のためです。

免疫療法は、免疫担当細胞を増やすことで体内の自己免疫を活発にして、身体の抵抗力を上げ、がん細胞を殺傷する能力を高める方法です。免疫療法は、かつてはインターフェロン-α、インターロイキン2などのサイトカインを使用することが一般的でした。その後、「免疫チェックポイント」という新たな作用機序に着目した治療薬の開発が進み、現在ではこちらが免疫療法の主流になりつつあります。

3. 分子標的薬による治療

RCCの治療において効果を発揮する分子標的薬が使用されています。

分子標的薬は、効率的にがん細胞へ作用することができ、正常細胞への影響を少なくすることができます。また、がん細胞の増殖を抑えて分裂を遅くするほかに、がんへの栄養供給自体も遮断する働きがあるため、体の他の臓器へ転移するのを防ぐことも期待されています。

分子標的薬の一つである「スーテント®」は、腎癌診療ガイドライン2017年版で推奨されているRCCの治療薬*です。

* 正式な効能・効果は「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」です。

監修:新潟大学大学院医⻭学総合研究科 腎泌尿器病態学・分子腫瘍学分野 教授 冨田 義彦 先生