「がん」って何?
私たちの体を作り、その働きを支えているのは37 兆個もの細胞です1)。これらの細胞は一定のサイクルで新旧入れ替わりながら、生命の維持に必要な役割を果たしています。がん細胞は、こうした正常な細胞の遺伝子に傷がつくことがきっかけとなって発生します。その後、生活習慣や環境汚染などさまざまな要因が作用しながら、長い期間をかけて性質(たち)の悪いがん細胞へと変わっていくのです。
細胞ががん化すると、周囲の状況を無視して自分勝手な行動をとるようになります。正常な細胞は身体活動に合わせて分裂が制御されていますが、がん細胞はこの制御を無視してどんどん増え続け、周りの正常な組織に侵入していきます(浸潤)。さらに、血管やリンパ管を通って体のあちこちに移動し、そこで増殖(転移)をはじめることもあります。こうした無法者ぶりこそが、がんが恐れられる本当の理由といえるでしょう。
1) Bianconi E. et al.: Annals of Human Biology 40(6) Nov-Dec: 463-471, 2013
RCC(腎細胞がん)はどんな病気?
腎臓は、みぞおちの高さの背中側に背骨をはさんで左右一対ある、ソラマメのようなかたちをした臓器です。血液中の老廃物を尿として体外に出したり、体の水分の調節を行っています。ほかに、血圧のコントロールに関するホルモンや造血に関するホルモンを生成するなどの働きをしています。
成人の腎臓にできる悪性腫瘍のうち、最も多いものがRCCです1)。日本人のRCC患者は人口10万人に6人ほどで、50歳ごろから増加し、70歳代まで高齢になるほど高くなります2)。比較的ゆっくり大きくなるタイプのがんですが、静脈の中に腫瘍が広がる(腫瘍血栓)傾向が強く、肺、骨、脳、肝臓、リンパ節などほかの臓器への転移を生じやすいがんでもあります3)。
なお、RCCは、喫煙者や肥満、高血圧の人に多く発症するということがわかっています3)。また、遺伝子解析が進み、RCCを発生しやすい遺伝子変異が報告されています4)。予防法に関するさまざまな研究も行われており、治療法としては、手術、免疫療法、分子標的薬などによる治療が用いられています5)。
1) Wong-Ho Chow et al.: Nat Rev Urol. 7(5): 245–257.2010
2) 国立がん研究センター「がん情報サービス」腎細胞がん患者数 https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/patients.html
3) 新臨床腫瘍学 改訂第5版 がん薬物療法専門医のために日本臨床腫瘍学会編 南江堂32章 腎細胞癌p492-499
4) 日本泌尿器科学会: 腎癌診療ガイドライン 2017年版(2019 年小改訂) 総論 遺伝因子
5) 国立がん研究センター「がん情報サービス」腎細胞がん 治療 https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html